天然物にも含まれる成分でカビ汚染を防止。

パラベンとは

化粧品、食品、医薬品には微生物による汚染を防ぐため、防腐剤が使用されることがあります。中でも、パラベン類は人体に対する毒性が低く、微生物、特にカビや酵母に対して効果的であるために良く使用されています。

パラベンの物質名は『パラヒドロキシ安息香酸エステル(別名:パラオキシ安息香酸エステル)』です。いくつかの種類のあるパラベンの中でも、一般的にはメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンが主に使用されています。

化粧品への使用

パラベンは80年以上前から化粧品に使用されています。
化粧品にパラベンを加えることで製品の長期保存が可能になります。
1種類のパラベン単独で使用しても十分な効果は得られますが、複数のパラベンや他の防腐剤を組み合わせることによって相乗効果が得られて、優れた保存効果を発揮します。

日本では「化粧品基準」によって使用量の上限が1%(100gに対して1.0g)と定められています。しかし、市販されているほとんどの化粧品においてはパラベンは0.1~0.5%という低用量で使用されています。

化粧品以外への使用

医薬品

パラベンは1924年に初めて医薬品の防腐剤として使用されました。その後今日に至るまで、多くの医薬品の防腐剤として使用されています。

食品

国内ではエチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどが醤油や酢、清涼飲料水などの保存料として認められ、使用できる量についての使用基準が定められています。
米国ではメチルパラベンとプロピルパラベンがGRAS(Generally Recognized As Safe:一般に安全と認められる物質)として、食品中の上限を0.1%として認められています。
欧州でも食品の種類別に基準が設けられており、メチルパラベン、エチルパラベンなどの使用が許可されています。

天然物中にも存在するパラベン

現在、パラベンは化学合成で作られていますが、パラベンは天然物中にも広く存在していることが知られています。
植物中のパラベンやパラヒドロキシ安息香酸はポリフェノール類に分類されますが、我々の身近な野菜やフルーツにも広く含まれていることが古くから知られています。

近年ではニンジン、トマト、あるいは菜種油、オリーブ油などの植物の抗菌作用や抗酸化作用が注目されていますが、それらの中にもパラベンやパラヒドロキシ安息香酸が含まれていることが分かっています。パラベンは体内に取り込まれると容易に分解されて、代謝物である『パラヒドロキシ安息香酸』に変化して速やかに体外に排出されることが知られています。

まとめ

天然物中のパラベンやその代謝物であるパラヒドロキシ安息香酸に関係する報告は数多くあります。我々は日常生活の中で化粧品、食品あるいは医薬品中のパラベンに触れたり口にしたりする機会が多くあります。そして古くから多くの有効性や安全性の検討を重ねて、抗菌作用や保存性などの機能を有効に利用してきました。パラベンの例は天然物中にある物質を化学合成で製造して人間の生活に上手く利用していた良い例といえます。

パラベンに関するよくある質問と答え

なぜ化粧品に防腐剤を使用するのですか?

化粧品などの人体に使用する製品では、製造時の汚染(一次汚染)開封後に空気中の浮遊菌や、消費者の皮膚から侵入する微生物からの汚染(二次汚染)化粧品が汚染を受けると、腐敗、変色、異臭の原因となります。
薬事法の61条で「3年以内に品質が変化する恐れのある化粧品は使用期限の表示が義務づけられている」のですが、それ以外は明確な使用期間が表示されていない場合があります。
消費者の使用状況や保管状態によって化粧品は少なからず汚染を受けます。特に二次汚染の場合はカビや酵母が原因の場合が多いのですが、原因微生物が人体に有毒性を示すものであれば、疾患の原因になりえます。このような汚染を防止するために防腐剤を添加します。

化粧品の防腐剤にはどのような物がありますか?

国内では化粧品基準の別表第3に記載されている物質が定められた含有基準量内で防腐剤として添加することを許されています。
パラベン以外の代表的なものとしてフェノキシエタノール、安息香酸塩類、サリチル酸塩類、メチルイソチアゾリノン、イソプロピルメチルフェノール、DMDMヒダントインなどの多くの防腐剤が認可され、使用されています。
これらの中には刺激性を考慮してシャンプー・リンスなどの洗い流すことを前提に使用を認められている物が多くあります。

なぜパラベンがよく使われるのですか?

パラベンは古くから使用されていたことから、その効果や安全性に関する情報が数多くあります。
また、パラベンは他の防腐剤に比較して低い含有量で優れた効果を示すことに加え、急性毒性、皮膚刺激性、眼刺激性などの毒性がほとんど認められないことが特徴と言えます。
パラベン以外の防腐剤の中には、低い含有量では十分な防腐効果が得られず、そのためパラベンと同じ効果を出すために含有量を上げれば刺激性などの毒性が強く表れるような物もあります。

まとめ

このように一般消費者が使用する化粧品にはカビや細菌による汚染から守るためにこれまでにいくつかの防腐剤が使用されてきました。中でもパラベンは効果と安全性のバランスが良く古くから使用されてきました。パラベン類は天然物中にも含まれている報告もあり、また、日常生活の中で化粧品、食品あるいは医薬品中のパラベンに触れたり口にしたりする機会も多くあります。パラベンは化粧品だけでなく私たちの日常生活を目に見えない形で守っている存在なのです。

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